なんてことない味のこと2023/04/15更新
うちでは科学調味料は使いません、っていうか店にありません。うま味のもとになる、ほんだしとかマギーキューブを使いません。
そういうことが普通な時代が終わりかけているようです、コスト的にも、作業的にも簡単なようで大変な苦労がいります。 それは、うちのような日々のご飯の店では特にそうです
おいしいっていうことを考えた時、毎日食べる食べ物がごく普通に食べられることがいちばんだと思います。食材を考えた時、国産と輸入物でおいしいはどちらに転ぶのか?その差はじつのところ価格の差ほど顕著ではありません、どっちがおいしいか?で、 こっちの方が若干おいしい気がする程度です。でも、出来る限り国産を、出来る限りおいしい安全な方を選ぶように心がけています。すべてを国産、それも最高のものを使うわけにはいきませんが、少なくともコストのために自分が食べたくないと思う食材を使いたくありません。
実際に店のものを、私を含め働くみんなが、まかないで食べています。すべてがいつも最高のとはいいませんが、何とかならないかと、小さな努力はしているつもりです。そういう、ごくふつうの洋食屋です。
ハンバーグとミンチ
ハンバーグ用のミンチは、 肉をブロックで買って自分のところで作っています。ハンバーグに入れるものは、自家製ミンチと、塩とコショウとナツメグとパン粉と卵とタマネギ、他にありません
昔は牛肉100%ハンバーグにこだわって、黒毛和牛のバラで作ったりしていた。
けれど、牛肉100%ではどうしても気に入る出来にならなくて、現在は、赤身と脂身の比率に気を使いながら国産豚と黒毛和牛、オーストラリア産アンガス牛スネ肉の合い挽きにしています。ミンチはどれも同じに見えるけれど、ハンバーグに使うミンチも肉質だと思う。
そのまま焼いても、おいしい牛肉や黒豚を使って挽いて、牛肉と黒豚の比率を調整して、現在進行形。
たぶん、スーパーで売っている合い挽き肉より格段に高価でおいしいミンチのはず、それはハンバーグを食べて、感じてもらうしかない。おいしかったら良いのだけれど。
ちなみにランチのハンバーグは、オーストラリア産の牛スネ肉と国産豚を使っています。
夏のあいだのトマト
今はどうか知らないけれど、私の勤めていた頃は、夏の閑な期間にトマトソースを仕込んでいた。ホテルの夏は婚礼がほどんど無くなり、パーティが減るので宴会厨房では仕事が極端に減る。閑な期間はシフトを変えて休みを増やすが、そんなのでは追いつかないほど閑になる。そこで、夏の期間に夏野菜を加工して保存する仕事をせっせとするわけだ。
今はホテル勤めではないから夏が閑というわけではないけれど、ちょっとした縁で近くの農家のNさんからカタチの悪いトマトを買っている。Nさんのところのトマトはとてもうまいのだ。Nさんのところは有機栽培でトマトを植える、冬の終わりはビニールハウスのまえにものすごい量の有機肥料が積まれている。化学肥料を使わずに育てて、完全に熟して真っ赤になったモノだけを毎日採り入れる、とうぜんうまいトマトになる。それを毎日買ってトマトソースにしている。
トマトを湯むきしてムーランで漉して荒いピューレを作る。みじん切りにしたニンニクと玉葱、唐辛子をオリーブオイルで軽く炒め、その鍋にこのピューレをいれて、弱火で半分になるくらいまで何時間か煮詰める。うちではベースになるトマトソースだから味は付けないまま、さまして冷凍。イタリア産サンマルッアーノの缶詰トマトなんかで作ったモノよりも数段あまくてうまいトマトソースができあがる。
基本的にすべてのトマトソースはこれがベース
バジルの香り
店で使うバジルの量はしれているので自家製のプランターで育てている。もちろん足らなくなったら買ってくるけれど、自家製が無農薬で安くて安心できる。
収穫は年に2回ほど、これも冷凍で保存する。収穫したバジルはよく洗い、タオルで水気をよくふき取る。少し多めのオリーブオイルとともに、細かくなりすぎないように注意しながら、クーイジナート(業務用のスピードカッター)にかける。ある程度細かくなったら袋に入れて冷凍する。
バジルオリーブオイルを冷凍するという事になる。冷凍のまま崩してトマトソースに最後に入れている、これだと香りもナマの時とほとんど変わらないうえに、かなり長く保存でき、うちでは乾燥バジルは使わずにすんでいる。
直方体の謎
ビーフシチューの肉が直方体で切り口が直線的であるのが不思議?と言うような記事を見たのですがその答えです。
当店のシチューはブロック肉で煮込み、出来上がって冷ましてからカットしています、ラーメンのチャーシューと同じで方式ですね。カット後、計量してソースと共に一人前ずつ保存しています。
家庭で作るようにばらばらのサイコロ肉で作ると、肉を引き上げたりソースを漉したりが大変になるからです、ホテルにいた時も同じやり方でした。
ソースを漉さずに一人前の肉の量が同じでないなら簡単なので、賄い用のカレーなんかはサイコロ肉で作ります。